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WIPO公表の「World Intellectual Property Indicators 2016」について雑感

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標記資料(WIPOホームページ参照)について雑感をあれこれツイートしたので、まとめて紹介。ツイートを貼り付けるだけだと少々見づらいので、2つ目以降はテーマ別に箇条書きにしておきました。

なお、この資料はざっくりいうと、WIPO(世界知的所有権機関)が、各国・地域の特許オフィスにおける特許・商標等の出願・登録の状況等について、統計データを整理したものです。毎年この時期に、前年分のデータが公表されています。当事務所のニュースレターの一つ「Client Alert」でも、毎年わたくしが記事にしていました。

特許権について

  • 興味深い点をいくつか。PDF22枚目をみると、中国での出願数は突出しているものの、非居住者による出願はまだ米国向けが圧倒的に多い。というか、米国での出願は、過半数がNon-residentによるもの。
  • 24枚目には、5極特許オフィス(日米欧中韓)の1883年からの特許出願数推移が折れ線グラフでまとめられている。日本だけが尻すぼみであり、これは見ていて悲しい。
  • 45枚目によれば、2010~13年の4年間での出願数トップ企業はパナソニックの34,352件、上位には日本企業がずらり。しかし2015年のPCT出願数は(61枚目)ファーウェイの3,898件が突出。
  • 50枚目には、技術分野別の出願数推移がまとめられている。2005年から2014年までの間に最も出願数が成長した分野はFood Chemistryで、10.7%の成長率。
  • 62枚目のA50は、PCT出願の出願人所属国別の件数。トップは米国の57,121件で、日本44,053件、中国29,837件と続く。中国企業は、まずは国内出願に熱心だが、日本は遠からず抜かれそう。
  • 65枚目のA55は、実用新案の出願数について。以前からの傾向であるが、中国だけが突出しており、他国ではほとんど用いられていない(桁が2つ違う)。

商標権について

  • 商標についても見てみましょう。PDF77枚目のB10によれば、中国が2位の米国を大きく引き離して、けた違いの出願数であることがわかります。その数、米国の約52万件に対し、280万件超。我が国は35万件弱。
  • 100枚目のB31によれば、2015年のある時点での登録商標数は、中国が1,000万件超で、米国の約5倍です。我が国も米国と同じくらいで、3位の約180万件。

意匠権について

  • 意匠権はどうでしょう。PDFの115枚目によれば、これも中国が突出しています。我が国は1980年ころをピークに下降線。
  • 119枚目をみると、特許や商標の傾向とは異なり、近年のグローバルでの出願数は伸び悩む。産業の、モノからサービスへの移行を反映したものでしょうか。
  • ハーグ条約に基づく意匠出願の企業別数(PDF134枚目)は、サムスンが2位にダブルスコアの1,132件。中国企業は見当たらず。特許についてはPCT出願のトップがファーウェイでしたが、これとは傾向が異なるようです。

余談:ちょっと特殊なCCライセンス(バージョン3.0ですが)

  • 余談ですがこのWIPOレポート、統計テーブル部分はCCライセンス(3.0 BY-NC-ND IGO)付き。Intergovernmental Organization、すなわち条約等に根拠を有する組織向けに用意されたライセンスです。
  • かなりマニアックですが、CC本部による、IGO向けCCライセンスに関する説明(英語です)はこちら。「3.0 BY-NC-ND IGO」のリーガルコード(詳細なライセンス条項)はこちら