カテゴリー別アーカイブ: 著書・論文等

【新著】Google Books 裁判資料の分析とその評価―ナショナルアーカイブはどう創られるか

(2016年10月29日追記 : 記事末尾に実物の書影を追加しました。)
(2017年1月16日追記 : 上野達弘教授による書評について追記しました。)

新著『Google Books 裁判資料の分析とその評価―ナショナルアーカイブはどう創られるか』商事法務さんより近日中に刊行されます。法律雑誌「NBL」で逐次掲載してきた論文等をまとめなおし、若干の分析や資料を追加したものとなります。当事務所の松田政行弁護士との共著です。

isbn978-4-7857-2474-0

私にとっては、三冊目の著書となります。2012年の『デジタルコンテンツ法制』(朝日新聞出版。生貝直人東大客員准教授との共著)、2014年の『インターネットビジネスの著作権とルール』(CRIC。福井健策弁護士、杉本誠司ニワンゴ社長、池村聡弁護士との共著)、そして本書。

Google Books訴訟自体は、本ホームページに全文を転載しました記事でも解説しましたとおり、昨年の控訴審判決でほぼケリがつき、今年4月の最高裁決定で完全に終結しています。そのため、本書が扱う内容は特に新規なものではありません。

もっとも、原被告が当初公表した和解案は、Googleが電子化した全世界の書籍を、個々の著作権者の具体的なアクションによらず広範に利用することを可能としうる、きわめて意欲的・挑戦的な内容でした。これを日本語で精緻に解説したものは他になく、今でもその価値は高いと自負しております。実際、本出版のために全記事を読み返しましたが、最も読み応えがあるのは初期のものでした。

思い返せば、私は本件のクラスアクション和解案が全世界的な話題となった2009年1月ころに弁護士として執務を開始しましたが、その直後に複雑怪奇な上記和解案と格闘することとなりました。日本書籍出版協会向けの解説講演(4月)と、NBL誌への執筆(5月)をすることとなったためです。それ以来、結局7年にも亘って本件を追い続けることとなりました。

その間、本件への政府としての対応を検討する必要から経済産業省への出向(2009年9月~2010年3月)を経験し、それを足掛かりとして様々な経験を積むこととなります。本件が私の最初期のキャリア形成に大きな影響を与えた事件であることに疑いはありません。奇しくも私の米国留学中に本件が終結を迎え、本書の出版に至ったことには、たいへん感慨深い思いがいたします。

公式には発売日が11月10日となっていますが、おそらく11月頭ころには手に入るのではないかと思います。アマゾンでも予約できますので、もしよろしければお手に取っていただければと思います。

[追記]大変ありがたいことに、早稲田大学の上野達弘教授から、NBL 2017年1月15日号 (1090号) 88頁にて書評を賜りました。一部抜粋させていただきます。

「本書は、本訴訟に関して他の追随を許さない網羅的資料として将来に残る価値を有することはもちろん、ナショナルアーカイブ構想に関しても、本訴訟の研究成果を踏まえた説得的かつ具体的なイメージを発信するものとなっている。昨今、日本では、米国法上のフェアユース規定に示唆を受けつつ柔軟な権利制限規定のあり方が議論されており、Google Booksのような所在検索サービスについても立法論が検討されている。また、ナショナルアーカイブ構想についても近時さまざまな動きが見られるところである。このような状況においてタイミングよく本書が上梓されたことは慶賀に値することであり、幅広い関係者にとって必携の書と言えよう。」

2016-10-29-22-43-37

【解説】知財本部「次世代知財システム検討委員会報告書」の概要【NBL 1074号掲載】

2016年4月18日に知的財産戦略本部で公表された「次世代知財システム検討委員会報告書」の概説を執筆しました。NBL 1074号 (2016年5月15日号、発行:商事法務) に掲載されています。

NBL

上記報告書等を受け、知財本部は2016年5月9日、以下の各資料を了承し、公表しています。上記解説記事の校了直前に公表されましたが、末尾で少しだけ触れてあります。

推進計画2016は、とりわけ「柔軟性のある権利制限規定」について「次期通常国会への法案提出を視野に」検討することとしており(推進計画PDF65枚目・工程表項目番号2)、今後の文化庁における議論が注目されます。2017年法案提出・可決、2018年4月1日に施行、それまでにガイドラインを公表、といった流れが想定できます。

これに対し、ニュース等で注目を集めていたAI創作物の保護については、まずはその要否も含めて検討というステータスであり(同69枚目・項目番号9)、すぐに何かが変わるということはなさそうです。


「NBL」  (商事法務) 1074号(2016年5月15日号) 2~5頁

知財本部「次世代知財システム検討委員会報告書」の概要

弁護士 増田雅史

去る4月18日、知的財産戦略本部内に設置された「次世代知財システム検討委員会」(委員長:中村伊知哉・慶應義塾大学大学院教授)の報告書が公表された。これは「知的財産推進計画2016」(5月9日決定)の策定に向けた検討の一環として作成されたものであり、特に著作権法改正の必要性に言及するものとして重要性が高いと考えられるため、法制度に言及する箇所を中心に紹介する。

(続きはNBL本誌にてご覧ください。以下アウトライン)

1.議論の方向性―次世代の知財システムとは

2.適切な柔軟性を確保した権利制限規定の導入

3.新たな情報財への対応
(1) 人工知能(AI)による創作物
(2) 3Dプリンティングに用いる3Dデータ
(3) ビッグデータ時代のデータベース

4.国際的な侵害対策
(1) リーチサイト対策
(2) サイトブロッキング
(3) 海外サーバ上での侵害行為への対応

5.まとめ

【解説】 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス入門 【知財管理65巻6号掲載】

1年ほど前のものですが、知財管理65巻5号(2015年6月)に掲載させていただいた共著記事の全文を、発行元の日本知的財産協会さんにお断りの上で転載いたします。

本記事の著作権は、小職及び共著者である佐藤亮太弁護士(当時は司法修習生)に帰属しています。

が、そもそも本記事は、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのメンバーとしての立場から、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスについて執筆したものです。そこで、佐藤弁護士と相談の上で、本記事を CC BY 4.0 (クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 4.0 国際) の条件で公開します。ライセンス条件を満たせば、どなたでも本記事をコピー、再配布、加工など様々な形で利用することができます。条件の詳細については、上記リンク先をご覧ください。

また、本記事は企業法務担当者を読者として想定して書かれたものですが、それ以外の方々にとっても、CCライセンスについての良いガイドになろうかと思います。

編集注記:

  • 機種依存文字や脚注の表示方法など、一部体裁が変更されています。
  • 追加ないし変更した箇所がある場合、当該箇所を赤字にしてあります。

「知財管理」 (日本知的財産協会) 65巻5号(2015年6月) 821~826頁

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス入門

増田 雅史
佐藤 亮太

[抄 録]
近年,インターネットとデジタル・コンテンツの普及により,作り手と作品の関係や作品の利用のされ方は大きく変化しています。こうした中で,「時代遅れ」となりつつある著作権制度を補完するものとして注目を集めているのが,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以下,「CCライセンス」)です。本稿では,著作権法との関係に触れながら,CCライセンスの思想,仕組み,広がりと今後の展望について,簡単にご紹介します。 続きを読む

【判例解説】 Google Books訴訟 フェアユースを認めた控訴審判決 Authors Guild, Inc. v. Google, Inc., 804 F.3d 202(2d Cir. 2015)【月刊コピライト 2016年4月号掲載】

月刊コピライト2016年4月号に掲載させていただいた拙稿の全文を、発行元のCRICさんからご了解をいただき転載します。本記事の著作権は小職に帰属しています。

なお、最後にも追記しましたが、本記事の発表後である2016年4月18日、連邦最高裁は、原告らによる裁量上訴の申立てを受理しない決定を下しました。これにより、Google Books訴訟はGoogleの勝訴という形で終結しています。

編集注記:

  • 機種依存文字や脚注の表示方法など、一部体裁が変更されています。
  • 追加ないし変更した箇所がある場合、当該箇所を赤字にしてあります。

「月刊コピライト」 (著作権情報センター) 2016年 4月号 45~53頁

Google Books訴訟 フェアユースを認めた控訴審判決
Authors Guild, Inc. v. Google, Inc., 804 F.3d 202 (2d Cir. 2015)

弁護士 増田 雅史

はじめに

Google Books訴訟として知られている米国のクラスアクション訴訟について、第2巡回区連邦控訴裁判所(以下、「本裁判所」という)は2015年10月16日、被告であるGoogle Inc.が行った膨大な書籍のスキャン及びデータベースの作成、並びにその後の検索サービスの提供等の行為が、連邦著作権法上のフェアユースに該当するとの原審判断を維持する判決を下した[1]

[1] 本件を「連邦巡回区控訴裁判所」(CAFC:Court of Appeals for the Federal Circuit)の判決として紹介するニュース記事等が散見されるが、正しくは「第2 巡回区連邦控訴裁判所」(Court of Appeals for the Second Circuit)である。連邦控訴裁判所のうち、CAFCは米国全域における特許事件等の専属管轄を有する特殊な裁判所であって、著作権事件は管轄外である。本件は、通常の管轄決定ルールに則り、南ニューヨーク地区連邦地方裁判所が属する「第2巡回区」の連邦控訴裁判所で審理された。

本稿においては、本件が我が国において注目されるに至った背景を含むこれまでの経過を振り返るとともに、今般の判決を紹介する。 続きを読む